平均額を当てはめるのではなく、自分の家族が必要とする支出から、見込める収入・資産を差し引きます。
- 生活費の期間を区切る末子独立まで、独立後、配偶者の老後など
- 一時支出を加える教育、住居、葬儀、当面の立て直し資金
- 公的・企業保障を確認遺族年金、死亡退職金、弔慰金、団体保険
- 収入・資産を差し引く配偶者収入、預貯金など。団信は返済負担の減少として反映
- 不足額と期間を保険へ定期・収入保障など保障の形を合わせる
遺族年金は加入制度・納付要件・家族構成で変わります。年金事務所等で見込みを確認し、将来の制度改正も踏まえて定期的に見直します。
生活費から考える方法とは
死亡保険の必要額は、年収の何倍といった目安だけでは決めきれません。同じ年収でも、子どもの人数、住宅ローンの有無、配偶者の収入、貯蓄、親族からの支援可能性によって必要な保障は大きく変わるためです。
生活費から考える方法では、遺族がこれから必要とする支出を積み上げ、そこから公的保障や手元資金を差し引きます。大きな保険金を先に決めるのではなく、暮らしに必要な金額を見える形にするのが目的です。
まず公的保障と家計の土台を確認する
民間の死亡保険は、公的保障や家計で不足する部分を補うものです。金融庁の公的保険ポータルでも、公的保険で保障される範囲を理解したうえで、民間保険の必要性を考えることが示されています。
遺族基礎年金は、原則として所定の年齢までの子のある配偶者または子が対象です。遺族厚生年金は別の受給要件と対象者があります。子の成長や配偶者の年齢で受給期間・金額が変わり得るため、現在の年額をそのまま生涯分に掛けないでください。
| 確認するもの | 見ておきたい内容 | 死亡保障への影響 |
|---|---|---|
| 遺族年金 | 亡くなる人の加入・納付状況、遺族の範囲、子の年齢、受給できる期間と年額。 | 受給できる期間に限って収入側へ入れます。見込みは年金事務所等へ確認します。 |
| 勤務先制度 | 死亡退職金、弔慰金、企業年金、団体保険の規程と受取人。 | 支給条件を満たす一時金・年金だけを算入します。 |
| 住まい・団信 | 賃貸か持ち家か、ローンの名義・残高、団信の加入者と対象になる条件。 | 対象者の死亡で弁済される残債額を確認し、返済額と管理費・修繕費を分けます。 |
| 貯蓄・資産 | 預貯金、換金に時間がかかる資産、生活防衛資金、老後に残したい資金。 | 遺族が実際に使える額だけを差し引きます。投資資産は価格変動も考慮します。 |
遺族厚生年金は2028年4月から見直しが予定されています。将来の受給見込みを固定値とせず、試算の前に対象となる家族と現行・改正後の条件を確認してください。団信も加入の有無と対象者で扱いが変わるため、ローン契約先へ確認します。
生活費を見積もるときの考え方
生活費は「現在の家計簿をそのまま将来に伸ばす」のではなく、遺族の暮らしに合わせて調整します。たとえば、本人の食費や交際費は減る一方、配偶者が働くための保育費、実家近くへ移るための住居費、家事や育児を外部に頼む費用が増えることもあります。
まず末子の独立前など、同じ期間を一つ決めます。以下の月額・年額をその期間の合計に直してから、支出と収入を差し引きます。教育費・住居費を別に書くなら、基本生活費から同じ費用を除いてください。
| 項目 | 期間をそろえる方法 | 自分の見込み |
|---|---|---|
| 遺族の基本生活費 | 本人分を調整した月額 × 12か月 × 対象年数。住居費・教育費を別に書くなら除きます。 | 月額__万円 × 12 × __年 |
| 住居費 | 残る家賃・ローン返済・管理費などの月額 × 12 × 対象年数。団信で弁済される部分は除きます。 | 月額__万円 × 12 × __年 |
| 教育費 | 学校費・塾代などの年額 × 対象年数。進学時の入学金や下宿費は別に加えます。 | 年額__万円 × __年 |
| 一時的な支出 | 葬儀、転居、当面の生活立て直し費用など。月額と混ぜず、そのまま加えます。 | 合計__万円 |
| 遺族年金・配偶者収入 | 受給できる年金と継続できる手取り収入を、それぞれ見込める期間だけ足して支出から引きます。 | 期間内の合計__万円 |
| 使える貯蓄・勤務先一時金 | 生活防衛資金・老後に残す分を除き、条件を満たす一時金だけを一度差し引きます。 | 合計__万円 |
5年間だけを区切った架空の計算例
たとえば、末子が独立する前の5年間だけを仮に区切ります。以下は、遺族年金を月10万円、配偶者の手取りを月8万円と仮定した試算です。実際の受給資格・金額は個別に確認してください。
| 区分 | 仮の計算 | 期間合計 |
|---|---|---|
| 支出・基本生活費 | 月18万円 × 12か月 × 5年 | 1,080万円 |
| 支出・住居費 | 月6万円 × 12か月 × 5年 | 360万円 |
| 支出・教育費 | 年50万円 × 5年 | 250万円 |
| 支出・一時費用 | 葬儀や転居など | 100万円 |
| 支出合計 | 1,080 + 360 + 250 + 100 | 1,790万円 |
| 収入・遺族年金 | 仮に月10万円 × 12か月 × 5年 | 600万円 |
| 収入・配偶者の手取り | 月8万円 × 12か月 × 5年 | 480万円 |
| 使える貯蓄・勤務先一時金 | 貯蓄200万円 + 一時金100万円 | 300万円 |
| 収入・資金合計 | 600 + 480 + 300 | 1,380万円 |
| この5年間の不足 | 支出1,790 − 収入・資金1,380 | 410万円 |
この410万円は5年間だけの不足です。子の独立後や配偶者の老後も同じ金額になるとは限りません。期間を分けて再計算し、年金の受給が終わる時期、働き方、住宅費の変化を反映します。物価変動や税・社会保険料の負担も、長期の試算では別に確認してください。
次の5年間も計算するとき、同じ貯蓄をもう一度引かない
上の例に、子どもの独立後の5年間を加えてみます。基本生活費は月15万円、住居費は月6万円、教育費は終了、配偶者の手取りは月12万円、遺族年金は仮に月6万円とします。これらの変化が5年後に重なると仮定します。実際には進学・独立・働き方・年金の変更時期がずれるため、それぞれの時点で区切ります。
年金の月10万円・6万円は受給額の目安ではなく、5年という区切りも法定の受給期間ではありません。2028年4月予定の遺族厚生年金の見直しでも、すべての人が5年で受給終了となるわけではありません。個別の受給要件・加算・見込額・期間を確認してから置き換えてください。
| 項目 | 1〜5年目:独立前 | 6〜10年目:独立後 |
|---|---|---|
| 生活費・住居費 | (月18 + 月6)× 12 × 5 = 1,440 | (月15 + 月6)× 12 × 5 = 1,260 |
| 教育費・一時費用 | 年50 × 5 + 100 = 350 | 0(この期間に追加支出がない仮定) |
| 支出合計 | 1,790 | 1,260 |
| 年金・手取り収入 | (仮の月10 + 月8)× 12 × 5 = 1,080 | (仮の月6 + 月12)× 12 × 5 = 1,080 |
| 貯蓄を引く前の不足 | 1,790 − 1,080 = 710 | 1,260 − 1,080 = 180 |
2期間の不足710万円 + 180万円 − 使える貯蓄200万円 − 勤務先一時金100万円 = 590万円
前半の不足410万円をすでに出している場合は、後半の不足180万円を加えても同じ590万円です。前半で使った300万円を、後半から再び差し引かないでください。これは10年間だけの試算で、配偶者の老後を含む生涯の必要保障額ではありません。
自分の家計では、区切る日と入金時期を先に確かめる
- 変化する時点を書き出す。進学・独立、転居、配偶者の就労開始・退職、年金の開始・終了を年表にします。子どもの独立予定と、遺族基礎年金の「子」の年齢要件は別です。後者は原則18歳到達年度末まで、障害等級1級・2級の状態にある場合は20歳未満です。
- 見込みと確認済みを分ける。将来の手取り増が未確定なら、増えない場合も試算します。年金は種類ごとに条件と期間を年金事務所へ、死亡退職金・弔慰金は勤務先へ確認します。教育費終了と年金の減額・終了を同じ年と決めつけません。
- 支払う年に資金が足りるか確認する。一時金や保険金が支出より後に入る場合は、当面使える現金も必要です。後年の収入余剰で早い時期の不足が自動的に埋まるとは限りません。期間合計に加え、年ごとの残高を確認します。
不足額を出したら、死亡保険の必要保障額と既契約の比較へ進みます。毎月の不足と教育費などの一時支出を分け、収入保障保険の受取期間・受取方法が家計に合うか確認してください。
教育費は古い平均額だけで決めない
教育費は、幼稚園から大学までの進路、地域、塾や習い事、下宿の有無で大きく変わります。過去の平均額をそのまま使うと、現在の家計や希望する進路とずれることがあります。
文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」訂正版などを参考に、家庭では次のように分けます。平均額は家計の正解ではなく、進路別の試算を作る出発点です。学校費や塾代を上の基本生活費に含めている場合は、教育費として再び足さないでください。
- 高校までの学校費と学校外活動費
- 大学・専門学校などの入学金、授業料、通学費
- 自宅外通学の場合の仕送り、住居費、生活費
- 奨学金や教育ローンを利用するかどうか
死亡保険で教育費のすべてを準備する必要があるとは限りません。使える貯蓄、受給期間を確認した児童手当、配偶者の手取り収入を見込みます。一方、奨学金や教育ローンは返済が必要な場合があり、将来の収入と同じように安易に差し引けません。親族からの支援も、約束の有無や継続性を確認します。
家族構成別の見方
子どもが小さい家庭
生活費と教育費を長い期間で見込む必要があります。配偶者がすぐにフルタイムで働けない可能性、保育費や家事負担の増加も考えます。保障期間は、末子の独立時期を一つの目安にできます。
住宅ローンがある家庭
団体信用生命保険で対象の住宅ローンが弁済される場合、死亡後の返済負担は下がります。ただし、契約した団信の被保険者、ペアローン等の借入形態、対象になる債務を金融機関へ確認してください。固定資産税、管理費、修繕費、引っ越し費用は残ります。
共働き家庭
配偶者の収入がある場合でも、育児・介護・勤務時間の変更で収入が下がることがあります。片方の収入だけで生活費をどこまでまかなえるか、数年単位で見ると現実に近づきます。
自営業・フリーランス
会社員と比べて勤務先の死亡退職金や福利厚生が少ない場合があります。国民年金だけか、厚生年金期間があるかで遺族年金の見込みも変わるため、年金記録や事業資金、借入の扱いを確認します。
必要額は時間とともに変わる
死亡保障は、子どもの成長、住宅ローンの返済、貯蓄の増加によって必要額が少しずつ小さくなることがあります。そのため、一度決めた保険金額をずっと固定するより、保障期間や保障額の下がり方も含めて考えると、保険料とのバランスを取りやすくなります。
| 保険の形 | 考えられる使い方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 定期保険 | 一定期間、まとまった死亡保障を確保する。 | 更新型は更新時の年齢等で保険料が上がることがあります。 |
| 収入保障保険 | 毎月の不足額を年金形式で補う。 | 受取期間・最低保証期間、一括受取時の金額や税務を契約ごとに確認します。 |
| 逓減定期保険 | 必要保障額が年々減る見込みに合わせる。 | 後半の保障額が、教育費や一時費用を含む不足分に足りるか確認します。 |
注意点
- 収入・年金は受け取れる期間だけ算入し、5年間の不足額を生涯の必要額と混同しない。
- 保険料を継続して払えるか、保障が減る時期も含めて比較する。
- 受取人、保険料負担者、被保険者の関係で税目が変わることがある。具体的な税額は公的窓口や専門家へ確認する。
- 健康状態によっては新しい保険に加入できないことがある。既契約の解約・減額前に、新しい保障の成立と責任開始日を確認する。
計算前チェックリスト
- 生活費・住居費・教育費を重複なく分け、期間をそろえた
- 遺族年金の対象者、見込額、受給期間を公式窓口に確認した
- 勤務先制度、団信、配偶者の手取り、使える貯蓄を確認した
- 子の独立後と配偶者の老後も別期間として見積もる予定にした
公式情報で確認したいページ
年金額・受給要件・税制などは変わるため、試算前に最新の条件を確認してください。各資料の確認日を下記に記載しています。
- 金融庁 公的保険ポータル:公的保障と民間保険の関係(2026年9月29日確認)
- 日本年金機構 遺族基礎年金・遺族厚生年金:受給要件・対象者・年齢条件を確認する資料(2026年10月8日確認)
- 厚生労働省 遺族厚生年金の見直し:2028年4月予定の改正対象と、影響を受けない人・継続給付を確認(2026年10月8日確認)
- 生命保険文化センター 必要保障額の算出例:子の独立前後など、期間別の支出と収入を積み上げる算出例(2026年10月8日確認)
- 住宅金融支援機構 団信による債務弁済:団信の債務弁済・対象外となる条件。契約した団信と照合する資料(2026年10月8日確認)
- 文部科学省 令和5年度子供の学習費調査(訂正版):令和8年1月16日の訂正版を案内。進路別に学校費と学校外活動費を見積もる入口(2026年10月8日確認)
次にやること
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生活費と教育費を整理してから相談したいとき
死亡保障の金額は、毎月の生活費、教育費、住まい、公的保障を並べてみると考えやすくなります。
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